日本公開:2018/3/10
監督:ダニエル・リベイロ
キャスト:ジュレルメ・ロボ、ファビオ・アウディ、テス・アモリン
ブラジル・サンパウロを舞台にした青春恋愛ドラマ。
主人公は盲目、さらに同性愛を描いているため、男女が手を繋いで遊園地で遊ぶ系の恋愛とは一味も二味も違いました。
冒頭から早速「ブラジルなのに全然ブラジルっぽくない」絵の出現に、はっきよーいのこったと同時にねこだましをされたような気持ちになりました。
しかしそれがまたこの映画に中毒性を感じる理由でもあります。
グレーをメインに寒色系を中心としたインテリアや装飾。
舞台は夏を描いているのに、日本の満員電車の真夏サラリーマンのようなネトネトした暑苦しさは一切感じません。
季節のイメージを壊すこともなく見事に夏を想像させながら清々しくドラマを堪能することができました。
さらにスコットランドの人気バンドベル・アンド・セバスチャンの水々しい音楽が追い討ちをかけます。
映画中に水の中で泳ぐシーンもたくさん出てくるため、プールで爽快な曲を聞きながらフリスクを食べる学生気分をずっと味わえるのでした。
肝心な恋愛の方は、少し複雑。
盲目の青年が同性愛に目覚めるのですが、彼を思う女子がいたり、また彼が好きな男子を好きな女子がいたりとなかなかうまく成就はしないのですね。
まあうまくいかない恋愛の方が燃えるみたいなことを石田純一さんあたりが言ってたような気もしなくもないので多めに見てやってください。
そんな中一つ気づいたのは、「目が見えない」ことが恋愛成就の過程を作ることもあるのだということ。
例えば、主人公の彼と、思いを寄せる男子が二人っきりで下校する場面がありました。
そんな時に「目が見えなくて危ないから一緒に帰ってほしい」という理由を作ることができます。
またシャワーに入るシーンでも同様です。
「目が見えないこと」は、日常生活の上で僕ら健常者の想像を遥かに超えるほど大変でしょう。
このブログすら目が見えないとどうやって打てばいいのか、途方にくれてすぐコーヒー牛乳を飲んでいるはず。
でも恋愛においてプラスに作用する瞬間もあるのだということは、小さな発見でした。
彼らの恋愛は基本的には飾っていなくて、どちらかといえば地味なのですが、
おわっ!めっちゃおしゃれ!!
と思う瞬間がありました。
恋愛を惑星で例える場面です。
皆既月食時の太陽と地球と月に当てはめて、三角関係を説明するのです。
宇宙は人間の力が全く通用しない壮大な世界
想像の中で、恋愛に夢中な二人の身を宇宙に置くことができれば、二人だけの世界を作り出すことができます。
よく駅の改札前で、恐らくただ1週間くらい会えなくなるだけなのに、環境に阻まれて苦境に立たされいるけどそんなことでは屈しないほど強い愛に結ばれる二人を演じる元演劇部並みに、密着して愛をささやき合う男女を見かけますが、彼らは頭の中で宇宙を想像し、二人だけの世界を作っているのだと思います。
ここは駅の改札ではなく、宇宙で、誰もいない、人間に邪魔されない、私たち二人だけの神秘的な空間だ、と思っているのです。
恋愛において宇宙を想像し、その中に身を置いて思いを馳せることは、二人の間にロマンチックを作り上げてしまうのです。
映画中で青年たちが皆既月食に自分たちを例える姿はとてもロマンチックでした。
現実でも宇宙や惑星で自分たちを例えることができれば、恋の改札口がオープンするのかもしれません。
盲目・同性愛を扱ってはいますが、根底にあるのは甘酸っぱい青春の恋愛で、全く構える必要のない、とても見やすくて心が洗われるような映画でした。
夏休みのお家映画にぴったりだと思います!