体験型戦争映画「野火」

こんにちは!

今日は映画館で開催されていた戦争特集で塚本晋也監督作品の「野火」を観てきました。

 

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「野火」

監督:塚本晋也

キャスト:塚本晋也リリー・フランキー中村達也、森優作、中村優子山本浩司

日本公開日:2015年7月25日

 

太平洋戦争末期、日本とアメリカが激しく衝突したフィリピン・レイテ島の敗残兵のお話。

戦争文学の金字塔と言われる大岡昇平さんの小説「野火」が原作となっています。

これまで「塚本監督の野火観てないの?」と複数の知人から言われ、その度に「まだ観れてないねん〜」と返し、観るか観ないかは自由なはずなのですが、一映画好きとしてどこか罪悪感を感じていました。

大阪の映画館で再上映されるということでこれはチャンスだ!と思い、盆休み真夏の満員電車を乗り越え観てきました。

場内は6〜7割埋まっている様子。

公開から約5年経過しているにも関わらずこの入りっぷりはさすが、複数の知人に観てないか聞かれるだけのことはあります。

この映画は監督曰く、戦争で起こった悲劇が風化しないように作ったそうです。

つまりはこの映画で戦争を擬似体験してもらって、2度と戦争を起こしたくないという気持ちになれば、監督の狙い通りといったところでしょうか。

 

2度どころか1.1度も戦争を起こしたくない気持ちになった、USJ越えスーパー体験型アトラクション戦争映画で失禁寸前でした。

レイテ島の美しい大自然をバックに繰り広げられる惨劇。

どれも主観的で、冷静に観てる余裕が1ミリくらいしかない。

突然炸裂する手榴弾、うじゃうじゃ湧き出すウジ虫、「生理的に嫌だと思うこと」のオンパレード。

前にいたお客さんの7割は何度も驚きで飛び上がって、緊張でいかり肩になっていました。

好きなことだけして生きていこうぜという生活スタイルが蔓延している今と真逆。

嫌なことしかないけど死にたくないぜという気持ちで、肉体的にも精神的にもギリギリのラインで生き抜こうとする兵士たちを観ていると、心から戦後に生まれてよかったと思いました。

ブラック企業で嫌な仕事を押し付けられていたとしても、降参は天皇に背く行為とされ、自決するしかなかった彼らと比べればそんなとこ辞めちゃえで済む話なのかもしれません。

 

特に印象的だったのが、食糧の劣悪な状況。

この映画の中で主な食糧として出てくるのは「イモ」か「人肉」です。(一部原住民の料理も出てきます)

驚くべきことに、フィリピンで亡くなった日本の軍人は約50万人と言われており、その内8割が飢えや病気によって命を落としたと言われています。

映画中でも食べ物をどうするか問題は重要案件として描かれており、それがキッカケで事態がこじれていくケースも数多くありました。

イモがあれば奪い合い、なくなってしまうと、自ずと考えるのは「人肉」です。

パリ人肉事件の犯人佐川一政さんに迫った衝撃のドキュメンタリー映画カニバ パリ人肉事件38年目の真実」で描かれていたカニバリズムとは全く違う。

食べないと死ぬ状況に追い込まれて起こるカニバリズム

人間を食べるなんて、、という意見もここではまかり通らないのです。

 

そんな過酷な状況まで追い込まれてまで、なぜ戦争をするのか。

この映画は不思議なことに、なぜ戦争をするのかという感覚すら抱かせません。

気づいたら攻撃され、気づいたら身を守るために殺し、もはや自分が何をしてるのかわからないという状況を、主観で冷酷に表現します。

何のために戦っているかわからない。

戦争に意味なんてない。

肯定するかしないか議論してる余地もなく、ただ目の前の絶望的な状況をシャワーのように浴び続けるのです。

それにより私の心の奥底で「あぁ戦争ホント嫌ムリマジやめて。。」という感情が芽生え出しました。

 

戦争のことをあまり知らない世代にとって、戦争の恐ろしさは映像で擬似体験してしまう方がより効果的に伝わるかのかもしれません。

可愛い子には旅をさせろ、と同じように、戦争を知らない子には「野火」を見せろと言いたくなるほど衝撃を受けた体験型の戦争映画でした。