NHKドキュメンタリー「ラストトーキョー"はぐれ者たち"の新宿・歌舞伎町(後編)」について
後編も同じく新宿の街に潜りこむ本作。
ホストやキャバクラといった多くの人がイメージするものではなく、細々と暮らす人たちの新宿を引き続き描きます。
観終えたあと、泣きじゃくってそのまま寝て起きたときみたいな清々しさを体験することができました。
本作は、映像を通じて、ディレクターであり、本作の主人公とも言える柚木佳江さんの娘である柚木映絵さんが自己成長を遂げるお話だといえます。
精神的に自己成長を遂げたラストは、実に優しい。
特別すごい演出がされてるわけでもないのですが、優しいピアノ調の音楽と、彼女自身と、新宿の夜が交差して「お疲れさま」と声をかけられているような感覚に。
彼女の成長は
「優等生であることはコンプレックスではなく、多様性の一つであること」
に気づいたことです。
これは本作のテーマでもあるといえます。
「あなたの真剣にやってる姿をみて私も頑張らないとと思った。」
麻雀店を3つも営む母佳江さんの言葉で、自らを蔑んでいた映絵さんは、こんな私でも誰かの役に立っているのだと気づく。
作中には、誰かが誰かの役に立つ瞬間がいくつか映ります。
大物芸能人が被災地に1億円寄付したというような大きいものではなく、
おばちゃんが麻雀店で手作りのご飯を出してくれる
というような小さいことで、
小さいことを繰り返し、人と人が連なり合って、皆で何とか生きている。
最初は客観的にみていた映江さんが、彼女自らもその一部となっていく。
その映江さんに姿を重ねて観ていた私も、その人たちの一部となり、居場所を見つけた気分になりました。
佳江さんの麻雀店の近くにチェーンの激安麻雀店が進出し、頭を抱えるのですが、スマホで冷静にみている私からすれば「そんなもん気にせずゴーイングマイウェイ!」
とついつい叫びたくなる。
激安麻雀店に、彼女たちが築き上げてきた人と人との信頼関係はそう簡単に崩せない。
激安麻雀店も多様性の一つ。
佳江さんの麻雀店も多様性の一つ。
個人でも店でも、互いを認め合えばいい。
俗に言うナンバーワンよりオンリーワン精神です。
新宿の街で、多様性を認め合い、支え合いながら何とか生きている人々を見ると、田舎と何ら変わりないのかもしれないと思います。
新宿で大金持ちになったり、有名になることは簡単ではないかもしれないけど、笑いながら生きることはちょっとした心の持ちようで誰でも可能なことに思えるのでした。。
新宿=生きるのが大変そう
というイメージは、他人と比べたがる自分が勝手に作っているだけなのかもしれませんね。。