新宿タイガーをみました。


公開日2019/3/22
鑑賞日2021/11/20

満足度★★★☆☆

どうもヤマシンです。

ピンクのアフロのような被り物、虎のお面を装着して1970年代からずっと新聞配達をしている男性を取材したドキュメンタリーを、今日は見ました。彼が新宿を自転車で走るたびに周囲の通行人はニヤニヤしてスマホで写真をとるのですが、それを見てると腹が立ってきて、40年以上信念を貫いて同じことを続けている人間を、その半分生きてるかどうかくらいのチャラチャラした、韓国アイドルを大して見ていないのになんとなく流行っているから見た目だけ取り入れて、友達から「お前韓国に生まれてたらアイドルになれたかもな〜!」と言われたことが忘れられず、電車でガラスに写る自分をチラチラ見たりして、ふとした瞬間に家でダンスを踊ったりしてみて、その気になってきて母さんに「これからメシ炭水化物少なくして」とかいきなり言い始めて、結局3日目くらいで「やっぱり炭水化物食えねえとかオレじゃねえし」とか言って諦めてスーパーカップ1.5倍を深夜に食べるような小僧たちに笑う資格がどこにあるのかと、一人一人呼び出して耳元でごはんをくちゃくちゃ食ってやろうか!

男なら誰しも胸を打たれるであろう彼の生き様は詳細こそ描かれないものの至ってシンプル。イチローみたいに具体的な記録があるわけではないのですが、こんな身近なところにも継続の天才がいたのかと惚れ惚れするばかりです。撮影時69歳であっても女性との関係は絶えない。経歴がどうとか、見た目がどうとか、一般的に物差しにしがちな男性ステータスなんかクソ食らえで、清潔感のあるジャケットを着て、ワックスでいい感じにチネって、聞き上手になることを良しとする世界がある一方で、何柄なのかよくわからないカラフルな上着を着て、手作り感満載の被り物して、ひたすらわけわからないことをしゃべりつづけることも良しとされる世界を自ら作り出している。「海外旅行に行かなくたってお前の暮らしてるすぐ近くに違う世界があるんだぜ!」と、まるでサンボマスターの歌詞に耳を傾けているかのような映画でした。

彼は映画・美女・夢・ロマンを大切にしていて、金と権力をとにかく嫌う。それを何十年と体現しているから、仮面の下の顔には欲にまみれた人間特有のくすみがなくてかなり艶やか。新宿タイガーの生き様が2019年になって、映画としてようやく流通しているということは、玉石混淆の情報でそれまで埋もれていたのかということでもあって、情報社会を恨む。ネットニュースに芸能人やインフルエンサーの恋愛事情を流すくらいなら「今日の新宿タイガー」と題して写真一枚でもパッとのせているほうがよっぽど世の中のためになる。

「新宿タイガー最高!」であることは間違いないのですが、しかしながら映画を見終わったら必ずみんなで拍手して外でパンフレット買って新宿タイガーさんの直筆サインをもらうまで帰ってはいけませんよ!みたいな空気が、おそらく舞台挨拶の上映回で見ていたら充満していたんだろうな、というような映画の語り方がどうも気持ち良くなかった。人間であれば良いところ、ダメなところがあるのは当然で、ゴッホだってあるのですから、新宿タイガーの後ろめたい部分も見たかったなぁ。

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