それでも僕は映画を見る〜ヤマシンの映画ブログ〜

映画の感想を書くことを生き甲斐とした男のブログでございます。

『犯罪王リコ』(1931)

公開日1931/10
鑑賞日2021/11/26

90年前の映画を鑑賞してみる。
ギャング映画流行の走りとなったモノクロ映画。
今から行う鑑賞は、0歳の赤子が90歳おじいちゃんの人生を俯瞰で眺めるかのようなことかもしれない、と思うと背筋が伸びるなぁ。
記憶として鮮明に残っている最も古いギャング映画は「ゴッドファーザー」(1973)で、それよりも40年近く前の作品だ。
当時の時代背景も知らず、傑作である、という誰が言ったのかわからない重そうで軽い誘い文句に乗せられて、音楽かじりたての中学生がレコードショップに入るかのような気持ちで見始めた。

イタリア系アメリカ人のリコが相棒ジョーとともに、ギャングとして成功するためニューヨークへ向かう。

名作ギャング映画の主人公リコとは一体どんな出立ちなのかと思っていたら、小柄な男だった。
リコを目の前にして言えば確実に撃たれるだろうからここでしか言わないが、チンチクリンだった。
想像していたロバート・デ・ニーロや、アル・パチーノのような洒落っ気はなく、「オンリー・ゴッド」に出てくるイカバンコク刀おやじとエロいときのMr.ビーンを足して2で割った感じだった。
話し声だって中川家の戦後日本モノマネみたいで、一体どう好きになればいいのか。
心底落ち込んだ。

しかし、彼が人と対峙する際の身振り手振りはまさにギャングらしく、堂々としていた。
徐々に彼に対する見方が変化していく。
パツンパツンで恰幅のいいお腹が言動に重みを加える。
身長が小さいからこそ、見上げながらしっかりと目を見てハッキリと喋る様子は、大きな力にも屈しない意志の体現に見えた。
リコの小柄な見た目は反対に、失意に落ちたとき、より心を打つ。
「酒は飲まない」というマイルールを持つリコに、しばらく禁酒している自分を照らし合わせて優越感に浸る。
自分にとって、リコを演じたエドワード・G・ロビンソンはこの先忘れることはないだろう。

中でも好きなシーンは、リコが敵対する相手を追い詰めるシーンだ。
ギャング映画で最もボルテージが上がるのは、やられたらやり返す、倍返しシーンだ。
「How is your business?(やあ、景気はどうだ?)」
どんな仕返しをお見舞いするのか、リコのギャングとしての素質が問われる場面で、切り出すセリフだ。
「これを覚えるだけで英語が話せる」英会話本に出てくるような簡易セリフにゾクゾクしてしまった!
ギャングの世界では焦らせば焦らすほど恐怖が増幅する。
敵対する相手目線で、チンチクリンと思っていた90年前のリコに恐怖を覚えることとなった、忘れられないシーンだ。

元祖個性派、とてもインパクトのある俳優に出会えた。
撮る側も、撮り甲斐があっただろうなぁ。

旅行みたいに、映画の終盤にいけばいくほど序盤を思い返して懐かしんでしまうストーリーテリング
ラストには、栄枯盛衰、歴史の真理を見せつけられて無情となる。
あっという間の78分だった。
人の魅力は、時代の移ろいにも変えられないみたいだ。

90年前の映画であっても、抱く感情は同じなのか、当時の人に聞いてみたいものだ。

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