公開日2002/3/30
鑑賞日2021/12/2
1993年にソマリアで起こった米軍を中心とする多国籍軍と民兵による壮絶な市街戦「モガディシュの戦い」をノンフィクションとして映像化した2001年の戦争映画だ。
ベースにあるのは余分なところを極力描かない態度。戦いの始まりから終わりまで、我々
が1番見たいとするところを察し、巧みに凝縮してみせており、監督リドリー・スコットの男気を根底に感じざるを得ない。長さは全く感じないのだが、それさえしても2時間24分かかるという事実が戦争に消費されるエネルギー量の莫大さを物語る。
戦地に赴く男たちの不安、緊張、葛藤を丁寧かつ大胆に見せる。このモガディシュの戦闘の物語としてのポイントを端的に言うと「ソマリアの民兵相手なら30分で終わる、という米軍の当初の予想に反して事態が深刻化していく」話となっている。そのため、戦闘前であっても呑気に振る舞う者や、気を抜かないように鼓舞する上官もおり、戦士全員を一括りで描くようなセミプロ意識はない。一人一人にリスペクトを感じる見せっぷりに感服する。
先日劇場で見た、みんなお肌がつるつるてんの日本映画『CUBE 一度入ったら、最後』は、ブラックホークダウンの男たち一人一人の汗を見習うべきだ。汗で伝わる緊張というのはこれくらい重要なのだと、胸ぐらを掴みながら言いたい。
最も興奮するのは当然、戦士たちがソマリアの首都モガディシュに足を踏み入れてからだと思っていたが、恐らく実際と同じようにモガディシュへ向かうシーンであったことは、僕にとってサプライズであり喜びだ。戦闘に突入すれば、興奮など言っている暇はなく「どう生き延びるか」だけに集中してしまうのだ。
敵対するソマリア民兵の描き方にもぬかりはない。白旗を上げた瞬間狂気を帯びて掴みかかり金品や衣服を剥ぎ取る様子はゾンビ映画顔負けだ。人間をそのように描くことに賛否はありそうだが、本性をただ再現しただけといえる。その恐怖は僕の映画鑑賞において至福の瞬間でしかない。
今でこそ技術の進歩、映画を撮る知識の普及により当然のように思えてしまうが、同時代に撮られた戦争映画『フランス外人部隊 アルジェリアの戦狼たち』を見ると、いかに今作の熱量が並外れたレベルのものであるか、認め、称えざるを得ないだろう。
圧巻だった!