それでも僕は映画を見る〜ヤマシンの映画ブログ〜

映画の感想を書くことを生き甲斐とした男のブログでございます。

『ブロンソン』(2008)

公開日2008
鑑賞日2021/12/4
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イギリス史上最悪と名高い犯罪者マイケル・ピーターソン通称チャールズ・ブロンソンの人生を描いた物語。
底が見えない映画だ。。

史実に基づいた映画の中で利益のために社会のルールに反し見つかった多くの者は、報いを受ける。『アンタッチャブル』のアル・カポネ、『カジノ』のエース、『凶悪』の木村など、警察にマークされ、時に罰を受けることで我々観客はカタルシスを感じる。
今作のチャールズ・ブロンソンも同様だ。
郵便局を襲撃し、セオリー通り刑務所へ収監される。
がしかし、犯罪行為は一向に収まらずむしろ加速する。
厳しい刑務所へ移送され、精神病院に入れられても止まらず、徐々に我々はチャールズ・ブロンソンが利益を得るために罪を犯して捕まるという映画的常識から超越した存在であることを知る。
太い反骨精神と自分を卑下しない信念を感じることとなり、史上最悪の犯罪者に見惚れてしまう恐ろしい映画として仕上がっている。。

この映画を語る上で、主演トム・ハーディと監督ニコラス・ウィンディング・レフンは避けて通れない。
2人の掛け算の値があまりにも大き過ぎる。

今作でトム・ハーディは野獣だ。
特有のなで肩と僧帽筋の発達により人間離れした骨格、胴体の厚み、30代に突入する直前の最も質量の高い状態、『フランス外人部隊 アルジェリアの戦狼たち』『レイヤー・ケーキ』『ロックンローラ』などで植え付けてきた規則に囚われない者としての印象が融合して、CGを使わずともその他映画で出会ったことのないビースト人間を体現してみせた。
後に半分ビーストといえるヴェノムとしてスクリーンを暴れ回ることは順当な役者キャリアを送っているといえる。
役者1人が画面を支配する瞬間を何度目にしただろうか、すばらしかった。

トム・ハーディの素質を見抜き、さらに魅力度を増して彼で映画を語りきったニコラス・ウィンディング・レフンもまたすばらしい。
冷静に、情熱的に、時にビジュアルを優先し、音を合わせながら組み立てられた映像は、トム・ハーディの魅力とチャールズ・ブロンソンの人生を倍々で伝え、さらに全編を1つのアート作品のようにパッケージ化していた。

どちらが欠けてもこの映画が「21世紀の時計じかけのオレンジ」と評されることはなかっただろう。
監督主演タッグの大成功例として後世に継がれていくべきだと思った。

トムが演じるチャールズ・ブロンソンを通して我々が見る景色は、暴力、血、牢獄、排便など、そんなものばかりだ。
普段の生活では目にしたくないもののオンパレードであるが、それらに囲まれながら監守たちの抑圧に徹底して反抗していく。
容易な未来への不安は一切なく、どれだけリンチされても反省することはない。
その姿は奇しくも、自由への抑圧に屈しない数々の歴代映画ヒーローたちとさえ重ねてしまう。

チャールズ・ブロンソンの人生が壮絶であることと、監督主演を始めとした作り手のエネルギーとが、画面を超えて善悪の判断すらもかすめてしまう恐ろしい力を秘めた映画だ。
実際は3回目の鑑賞であるが、やはりすごいし、トム・ハーディのちんぽが見えかけるというおまけまであるぞ。
これを見続ければやせるに違いない、ガッと疲れて最高なのだ!