それでも僕は映画を見る〜ヤマシンの映画ブログ〜

映画の感想を書くことを生き甲斐とした男のブログでございます。

『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)

『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)

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監督:中野量太

出演:宮沢りえ杉咲花オダギリジョー松坂桃李、伊東蒼、篠原ゆき子駿河太郎

配給:クロックワークス

概要

宮沢りえの「紙の月」以来となる映画主演作で、自主映画「チチを撮りに」で注目された中野量太監督の商業映画デビュー作。持ち前の明るさと強さで娘を育てている双葉が、突然の余命宣告を受けてしまう。双葉は残酷な現実を受け入れ、1年前に突然家出した夫を連れ帰り休業中の銭湯を再開させることや、気が優しすぎる娘を独り立ちさせることなど、4つの「絶対にやっておくべきこと」を実行していく。会う人すべてを包みこむ優しさと強さを持つ双葉役を宮沢が、娘の安澄役を杉咲花が演じる。失踪した夫役のオダギリジョーのほか、松坂桃李篠原ゆき子駿河太郎らが脇を固める。

映画.comより

感想

戦慄の感動物語だ。当時劇場で1人で、友人と、恋人と、そして5年後の現在見てもその感動は冷めやらず、それどころかもっと増した。どうやら歳を重ねるほど感動するようだ。この調子で行くとおじいちゃんになって、病院のベッドで今作を見たら「感動死」で終わる人生になるかもしれない。

生死の狭間におかれた母が自分の使命を全うするために奔走する。その姿は子供に命を継承していくサバンナの動物たちを見ているような美しさがあった。

死を受け入れることから始まっていく本当の家族の物語。母の命を知ることで、家族それぞれが自分と向き合い己を知り、周りを助ける人間へと成長していく。本来薄いグラデーションで目に見えないような人間の成長過程が、この映画には刻まれているかもしれない。

ど直球に生死の間に置かれた人間を描く重たいテーマを持った作品だが、シリアスには決して描かないところが何よりの推しポイントだ。

銭湯の湯気なのか、母の優しさなのか、子供たちの体温なのかが粒子状になって映画全体にまとわりついているかのような、一定の温もりをずっと保った映画なのだ。優しく重なる音楽と、情緒のある背景、他はあり得ないと思ってしまうキャスティング、俳優陣の振る舞いもすばらしい。

栃木県足利市をロケ地として撮影された背景には、不特定多数の人間がほとんど映らない。とても整然としている。息苦しさはないのに閉鎖的な風合いがある。身内の物語を楽しむときに、他の何もかもを忘れてしまうみたいな、そんなイメージを蘇らせるものがあった。見終わる頃に抱いたこの家族の物語から離れたくないと思う気持ちには、親戚の家に行って帰りたくなかいときと同じものを感じた。温かいドラマを、他の何ものにも邪魔されないように閉じ込める背景には、とても心地の良いものを感じた。

本作は家族という一つの小さな塊の弱さや小ささではなく、強さにフォーカスが当てられ続ける。客観的ではなく、主体的に、情熱的に、家族が描かれ続ける。悲しい物語なんかでは絶対になく、僕たちが強くなる物語であると自覚してみることが、鑑賞者としてできるせめてものお返しのように思えた。

オカン映画といえば劇場版クレヨンしんちゃん。いざというときに子供のために何倍も強くなるハートはみさえも、双葉も同じである。この映画は「みさえが余命を宣告される物語」ともいえるかもしれない。

温かいドラマをお探しの方にまずオススメしたいすばらしい作品です。

満足度⁡

90%